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社長と先代にどう説明しようかと考えていると、
「____うるさい」
不機嫌な低い声にそれを中断された。
声は僕の背中から聞こえてきた。
ということは、後ろに並んでるお客さんだろうか。
うるさいというのは僕のこと?
それとも別の誰かのこと?
いや……違うよなぁ。
僕を含め列に並んでる人達は、辛抱強く黙って順番を待っているもの。
「____イライラする」
まただ。
背後からブツブツと、地を這うような声が聞こえてくる。
声は低い。
低いけどこれは女性の声だ。
なににイラついてるのか知らないけど、こんな所で悪態つくなんてめんどくさそうな人だなぁ……あまり関わりたくない。
「____死んでるくせに」
え……?
ちょっと待って、聞き違い?
今、死んでるくせにって言わなかった?
まさかだけど後ろの人、店長の姿が視えるのか?
「____朝から不愉快だ。もういい、消す」
“もういい、消す”と聞こえたのと同時。
ビュンッ!!
と僕の耳元を掠め、風を切る音がした。
その直後、
『があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!』
店長が断末魔のような叫び声をあげた。
視れば蒼く光る矢のような物が左胸に突き刺さり、口から血と泡を吐き出しながら、それを抜こうともがき苦しんでいる。
『ぐ、苦じいぃ!苦じいぃ!抜いてくれぇ!痛い!痛い!助けて!苦じいぃ!直樹ぃぃぃ!助けてくれぇぇぇ!!』
ナオキタスケテ
最後に呼んだのは家族の名前だったのだろうか?
必死に助けを求めながら苦痛に顔を歪め、僕の目の前で店長は砂のように崩れて消えた。
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