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「おまえら、ちゃんと反省してんのか?」
オフィスチェアーの上に正座させられた僕と水渦さんは、怒り心頭の社長から、今まさに大目玉を食らっているところである。
最初は床に正座だ!と騒いでいた社長に、「それじゃあ足が痛くなります」と庇ってくれたユリちゃんのおかげでこうなったんだけど、なんせキャスター付きだから身じろぐたびに不安定に揺れた。
「まったく、プライベートなことは覗くなっていってるだろうが!」
社長の剣幕に、「すみません、反省してます」と項垂れる僕の横で、水渦さんはシレっとそっぽを向いていた。
もう!お願い!火に油ダクダク注ぐのはヤメテ!
「ミューズ……反省してねぇだろ?つか、おまえが言い出したんだな?エイミーはまだ霊視できねぇからよ。それからエイミーもエイミーだ、ミューズに誘われたからって一緒になって覗くな!」
丸太のような太い腕を、分厚い胸の前で組む社長の威圧感。
だけど、なにも言い返すことはできない。
なんたって100パー僕らが悪いもの。
もう社長の気が済むまで責めを受けるしかないのだ。
もちろん反省してる、少なくとも僕はね。
だけど水渦さんは……絶対してなさそう。
だって、めっちゃ唇噛んでるもの、笑い出すのめっちゃガマンしてる感じだもの。
どうか社長に気付かれませんように……なんて祈ったけど、僕の願いは叶わなかった。
「オイ、ミューズ。なにがおかしいんだ?なに笑い堪えてんだ?あぁ?」
いくら根っからのフェミニストとは言え、乱暴な言葉使いに社長の苛立ちがみえた。
が、そんなことには興味すらないと言わんばかりに、マイペースな水渦さんはこう切り出した。
「……ひひ……ッ、失礼しました。ときに社長、どうしても疑問に思う事がありまして。答えていただけますか?」
えぇ!?
いきなりぃ!?
てか大丈夫!?
なんの質問か知らないけど、ソレ、今聞いて大丈夫なヤツ!?
「なんだ?言ってみろよ」
僕の心配をヨソに、意外にも社長は答える気があるみたい。
てか、水渦みうずさん、どうか変なコト言い出しませんように……!
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