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僕は大きく息を吸い、田所さんから少し離れた所に立つと湾曲した左右の手のひらを上に向け神経を集中させた。
緊張で手が汗ばんできたが、その水分が電気の力を増幅してくれる。
うまくいくだろうか?
期待を持たせておいて失敗したら……いや、その時はあやまってもう一度やり直そう。
僕はどうしても田所さんに見せたかった。
手のひらに集まった電流に、いつもより3割減の弱い電流を大量に流す。
さっき気が付いたんだ。
力を抑えてうまくすれば、赤色が薄まって、ちょうど桜のようなピンク色になる事を。
田所さんを待っている間、たくさんの電気の花を造っておいた。
あとはこれを、
田所さんの目の前に咲かせてみせる、
支えきれない電流に身体が、
手のひらが、
ガクガクと震えだす、
もう少し、
あと少し頑張って、
そしたら、
この薄闇に、
桜の花が_____
バチバチッ!!!
大音量の電気の弾け散る音がして、僕はそのまま後方に飛ばされた。
腰と背中の痛みに半泣きになりながらも、仰向けに倒れた視界に映る柔らかな眩しさに大きく息を吐いた。
「はは、ははは……咲いた……! やったぞ……!」
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