第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

113/222
前へ
/2550ページ
次へ
◆ いつも明るいけど……色々あるんだな。 弥生さんのご家族、なんでもっと弥生さんに寄り添ってあげられなかったんだろ。 せめて実のお父さんくらいはって思っちゃう。 昔から孤独で誰にも頼れなくて、強くならなくちゃって思いが強すぎて、それでキャパ以上に強がっちゃうんだ。 そんな中、ジャッキーさんみたいに優しくて、頼ればいいよって言ってくれる人が現れたら……そりゃあ好きになってしまうよね。 ヤヨちゃんとの出会いも、不思議な縁を感じたよ。 元神候補の脱落者達。 元は人で、一人一人はそんなに強くない。 弥生さんを助けたくて、霊力(ちから)を合わせて生まれ変わったんだ。 弥生さんはヤヨちゃんに愛されている。 てか、なんでいつも黒いワンピースなのか謎が解けたわ。 着替えてこいって言われちゃあね。 元から着てたほうが楽ちんだ。 弥生さんとそんなお話をしながら、またもや話はどんどん飛んでいく、広がっていく。 「弥生さんが霊媒師になったきっかけは?」 「先代のスカウト。28の頃、深夜に悪霊狩りしてたら、先代がキラキラした目でやって来て『その刀、ウチの会社で思いっきり振ってみませんか!』って、手を差し出されたの」 「うわぁ、なんかプロポーズみたいなスカウトだねぇ」 「なー! ちょっとトキメイちゃったもん!」 キャッキャウフフと弥生さんと話し込む。 楽しいなぁ。 弥生さん手作りの美味しいお弁当、いつまでたっても尽きないお話、深夜のピクニックはまるでデートみたいでワクワクしちゃう。 やだ……! やっぱり僕って弥生さんに恋をしてるのな? 今夜は晴れで、見上げれば満天の星空がめちゃロマンチックなのだ。 ああ、星座に詳しかったらなぁ。 ”弥生さん、あの星はね”なんて言えるのに。 星座には明るくないけど、単純に星が綺麗だ。 特にあの大小二つの星は、紫色に輝いてだんだん大きくなってくる。 ……ん?  なんで星が大きくなるの? いや、大きくなってるんじゃないな…… んとー、え?  ウソ、こっちに向かってきてない?  ん? ん? ん? 隕石?  そんなバカな。 「…………エイミーちゃん、来たみたいだ」 弥生さんも空を見上げていた。 目線の先は紫色の大小二つの星。 「来たみたいって……もしかして、だんだんコッチに向かってきてる、二つの星を言ってるの?」 「うん、あの光はヤヨちゃんだ。……あの子がマジョリカ連れて来たんだよ」 弥生さんの横顔にはかすかな緊張が浮かぶ。 無理もない。 時計を見ればヤヨちゃんが出発してから一時間近くが経っていた。 黄泉の国から戻ってきたのだ。 マジョリカ・ビアンコ様を連れて。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2367人が本棚に入れています
本棚に追加