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「アンビリーバボー?」
ハンドルを握り、真っ直ぐ前を見るキーマンさんは、戸惑う僕になんだか楽しそうだった。
「ん……そうですね。ネットの世界にダイブ、というのが具体的にどんなモノなのか分からないので、そういった意味では疑問に思います。でも信じますよ。だって、ウチの会社の人達のスキルを散々視てますからね」
言いながら僕は、後部座席で窓にへばりつくゴキゲンな幽霊猫を眺めていた。
しっぽの先がフタマタに分かれ、一本だって可愛いしっぽが二本だなんて、すこぶるお得感だ。
嵐さんのネットにダイブって、一体どのくらいのコトが出来るんだろう?
調べものとかするみたいだから、検索と結果の閲覧は可能なんだろうな。
スマホやパソコンがなくても、ネット回線やプロバイダー契約がなくても、直接ネットの閲覧が出来る……下世話な話、料金もかからないとなると……や、ちょ、すごい便利、大福のフタマタしっぽばりにすこぶるお得感!
「僕……嵐さん起きたら、そのスキルについて詳しく教えてもらいます。もし僕も習得出来たら……家のネット回線、すぐに解約するんだ!」
「ワァオ! デザイアの塊じゃないか! だが、嫌いじゃない。俺に霊力があれば同じ事を言うだろうからな!」
あははは、なんて笑い合ったそのすぐ後、ちょっと古めなカーナビの、案内アナウンスが流れだしたのだが……
【そろそろ目的地だよ! 忘れ物はない? 社用タブレットは持った? んもー、あんたはウッカリだから心配になっちゃう。 ……あ……チ、チガウ! ……ご、誤解しないでよ? ミクはただのお隣さん、ただの幼馴染なの! べ、別にあんたのコトなんか好きじゃないんだからねっ!】
と、ハンパない萌え声が目的地付近だと教えてくれた。
え……?
これ、どこのメーカー?
いや、今、いろんなカーナビあるけどさ、アナウンスに声優さんを起用する事だって珍しくはない。
でも無駄な喋りが多すぎない?
後半のセリフ、いる?
「キ、キーマンさん、このカーナビ、途中までは普通の声が無駄口叩かず喋ってましたよね? なんでいきなりこうなっちゃうの?」
前に水渦さんの運転で、神奈川の現場に行った時はカーナビ自体を使わなかった。
水渦さんは道をよく知っていて(友達がいないから暇な時はゼン〇ンばっかり見てるらしい。てかなぜ地図チョイス?)、彼女の選んだルートで行ったからだ。
なので、不意打ちの萌え系ツンデレにちょっとビックリしちゃったよ。
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