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「いいえ。これはマンドラゴラという植物です」
「何それ。初めて聞く名前ね」
しげしげと花に見入る。
「これは伝説の植物でございます。地中に埋まっている根が人の形に似ているのです。
ですが根っこを抜くと悲鳴をあげて、人を死に至らしめるのですよ」
「抜くと悲鳴を……それは面白そうね」
女が興味本位でマンドラゴラを抜こうとする。
「いけません!」思わず叫んだ。「抜くのはおろか倒すだけでも叫びをあげますから」
「そんな大声出さないで。嘘に決まっているでしょう」
これだから女は愚かしい。本当に扱いかねる存在だ。
私は気を取り直して話を続ける。
「このマンドラゴラで対象を殺すのです」
「それで世界で最も価値のある悲鳴なのね」
「左様でございます。もっとも価値はお客様の支払い次第ですが」
「報酬ははずむわ。あの憎い女を殺せれば満足よ」
「それは保証いたします」
「でも証拠が残るんじゃないの?」
「抜かれると途端に枯れますから疑われません。あとはお客様が対象にマンドラゴラを抜かせるだけです」
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