世界で最も価値のある悲鳴

4/6
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「いいえ。これはマンドラゴラという植物です」 「何それ。初めて聞く名前ね」  しげしげと花に見入る。 「これは伝説の植物でございます。地中に埋まっている根が人の形に似ているのです。 ですが根っこを抜くと悲鳴をあげて、人を死に至らしめるのですよ」 「抜くと悲鳴を……それは面白そうね」  女が興味本位でマンドラゴラを抜こうとする。 「いけません!」思わず叫んだ。「抜くのはおろか倒すだけでも叫びをあげますから」 「そんな大声出さないで。嘘に決まっているでしょう」  これだから女は愚かしい。本当に扱いかねる存在だ。  私は気を取り直して話を続ける。 「このマンドラゴラで対象を殺すのです」 「それで世界で最も価値のある悲鳴なのね」 「左様でございます。もっとも価値はお客様の支払い次第ですが」 「報酬ははずむわ。あの憎い女を殺せれば満足よ」 「それは保証いたします」 「でも証拠が残るんじゃないの?」 「抜かれると途端に枯れますから疑われません。あとはお客様が対象にマンドラゴラを抜かせるだけです」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!