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五度目の悲鳴が上がった。
自動ドアから。
僕の気配を感知して、自動ドアは、絹を裂くような、甲高い悲鳴を上げながら、
開いた。
「キャーッ」て叫びながら。
……なーんだ、悲鳴の正体は、この自動ドアだったのか。だからみんな知らん顔だったのか。
力なく笑う僕の手に握られたスマホから、男の声が、何やらずっと喋っていたが、僕にはそれに対応する気力がもう残っていなかった。
──もしもし、事故ですか、事件ですか。もしもし、どうしました、何がありました? もしもし、もしもし!
[おわり]
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