さけぶもの

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二度目の悲鳴が聞こえた。 僕は目を見張って周囲の様子を窺ったが── どうしたことだ、買い物袋を提げて自分の車へと向かう人、誰一人として、悲鳴に気付いた様子が微塵もないじゃないか。 え、なに、どういうこと? 聞こえたよね、キャーッて、聞こえたよね? もしかして聞こえなかったフリをしてるとか? 面倒に巻き込まれたくないから? でも、それにしても、みんな何事もなかったかような、悲鳴という非日常的なものに対しての反応というものが── ああ、そうか……。非日常的だから、きっと「悲鳴を聞いた事実」を受け入れられないんだ。 いやいやいや、事実だから! 現実だから! ちょっとは「あれ?」って思えよ! ……待てよ。 もしかして、"他の人は本当に聞こえてないんじゃないだろうか"。 つまり、あの悲鳴は、僕にだけ聞こえる…… 背中に氷水を入れられたみたいに、全身がぞわわわわと総毛立った。と同時に、背後から何かがそっと近付いてくる気配を感じて、思わず僕はものすごい勢いで振り返った! ……何もなかった。真っ黒な長い髪で顔を隠した女性も、小さい穴がぷつぷつ開いてる白いマスクを被った男もいなかった。ものの見事に僕の勘違い、過剰反応だ。 けれど、命を持たないモノが蠢いていそうな場所は、たとえスーパーの屋上であっても、そこかしこに──あれ、デジャブだな。まあいい、そういった不気味な闇は、至るところに影を落としているのだ。 生きた人間も怖いが、生きてないものも怖い……。やはり帰ろう、ここはよくない場所だ。 ──三度目の悲鳴が辺りに響いた。
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