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いやだ、もう、やめてくれ!
もうあんな、断末魔のような、絶望の果てに振り絞ったような、壮絶な悲鳴なんか聞きたくない。
まわりの人間たちの、あまりにも無関心な様子にももううんざりだ。誰かが──生きた人間であることが前提だけど──「悲鳴」という手段で助けを求めているんだぞ!
あっ──
そうか、そうだよな。このままなら僕だって、その「無関心な人間」のひとりなんだ。悲鳴を聞いているのに何もしない、何もできない。なんて情けないんだ。
何か、何かできる筈。臆病で、弱気で、ちっぽけなこの僕にだって、何か。
僕は胸ポケットからスマホを取り出しながら、店の入り口に向かって歩き出した。この非常事態をどうすべきか、具体的な対策など全く頭になかったし、理論的に考えることも不可能だったけど、とりあえず警察に通報するのと、店員に状況を説明するべきだと思った。
四度目の悲鳴が、今度はこれまでよりもすぐ近くで聞こえた。驚いてスマホから顔を上げたけど、店内から出てくる客たちは、やはり平然としている。
まさか、やっぱり幽霊……?
でも、幽霊だとは言い切れない。だって僕には霊感なんて全然ないんだし。
とりあえず警察を呼んで、何もなかったらなかったで、それでいいじゃないか。万が一何かあったら、そこから先は警察の仕事だ。
僕はスマホの通話画面を開き、震える指先で「110」をタップしながら、店内入り口である自動ドアへと近付いていった。
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