第一章・ーさけんだー

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 ようやくの事で仕事を終えて、時刻も深夜というか、日付を超える直前になってから帰宅した。  鍵を開け、息を吐きながら靴を脱ぎ、廊下へと上がると電気も点けずにそのまま、一番手前、右手にある襖を開けると和室へと直行する。  一人暮らしでいるには少しばかり広い一軒家だが、最初からここに独りで住んでいた訳ではない。  かつて住んでいた者は亡くなってしまっただけで、それから俺は、ずっと、独り身なだけだ。  ネクタイを緩め、再び息を吐き、垂れ下がる紐を暗闇の中で探り当て、電気を点けようと引っ張る手に力を込めた瞬間、フリーズする。  ――今、……。  悲鳴が、聴こえた……ような?  それも、この広い一軒家の何処からかは分からないのだが、とにかく、家の何処かから悲鳴が響いてきたように思えた。  ……暗闇のままで、ある意味良かったのかも知れない。  相手が誰だかは知れないのだが、端的にこちらの居場所を悟られないようにするには、暗闇を使うのが最適な手段と言える。  ただ、残念なのは、侵入者に気付けず、普通に音を立てて入ってしまった事だ。  侵入者が何処に潜んでいるのかは分からないのだが、もしも和室から近い場所にいるなら、こちらが立てた音には気付いているだろう。  ……だが、幸いにも、先刻聴こえた悲鳴の大きさからすると、二階にいると思われる。
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