第一章・ーさけんだー

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 はぁ。まぁ、仕方ないか。この間取りに慣れるのにも結構な時間がかかったし、取り敢えず包丁を強く握り締めてから、残る部屋を物色する。  ……いないな。おかしいな。何故誰もいないのだろうか? 確かに声は聴こえたのに、部屋中隈なく探しても、誰もいない。  まさか、一階からの声だったのか?  そう思って一階へと続く階段を目指し始めた時に、再び悲鳴のような声が響いてきた。  ……近いな。やっぱり、二階にいるような気がするのだが、何故姿を見付ける事すら出来ないのか。  広い家だ。別の部屋を探索している間に、物音一つ立てずに探し切った場所へと、避難しているのだろうか。  まさかな。物音一つ立てずになんて、到底素人に出来る芸当ではない。  だが、仮にも助けを求めるように悲鳴をあげているのに、探してくれている相手から逃げようなんて、そんな事するのかな?  ……。  とにかく探すか。  というかこの部屋。多分久し振りに入ったんだが、何かおかしい。  おかしい。というよりは、……汚れている?  空気も生臭いというか、腐ったような匂いが充満しているし、壁紙も赤黒いシミで、……染まり切っているようだ。  悲鳴は相変わらず続いている。このままでは近所の人に通報されても、何らおかしくはない。  早くどうにかしないと、いけないだろうな。
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