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「お前が、ぶつかってきたんだろうが、ああっ」
「お前が、スマホしながら歩いていたからだ、ボケッ」
学生風の青年と、年配者のサラリーマンが、改札機のまん前で、いざこざを起こしていた。
出口を塞がれ、行き場を無くした通勤客達が溢れ始めていた。
その場にいる、誰もがイラついていた。
そして、そのごった返しの怒りの渦中を構いもせずに割って入る男がいた。
黒いツナギ服に、赤いマフラー、リュックサックに安全靴。
それが彼のお決まりの格好。
「うっ」
「わあっ」
「やだっ」
社員もバイトも女子高生も駅員も、皆がたじろいで、いそいそと道を空けた。
顔を高揚させて、肩をいからし近づいてくる。
明らかに、彼は怒っていた。
その姿にもう少し早く気が付いていれば…
ケンカなんかしなければ良かったと後悔もする事が出来ただろうに。
依然として火花を散らしている二人の前に立ち、少年は怒鳴った。
「おいっ、遅刻しちゃうだろっ」
「あん。なんだ?」
「邪魔なんだよ、この悪者めっ」
「お、お前!?、ま、まさかっ…」
「漫画パーンチ」
説明しよう。漫画パンチとは、繰り出した拳圧だけで、対象者を4メートル上部に吹き飛ばし、且つ必ず、頭部から無防備に着地させる技の名前である。
これにより、対象者の殆どは、脳挫傷か頸椎骨折で、重体、或いは即死に至る。
ドガッ
「キ、キャーッ」
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