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「いやあああああ」
おかあさんの悲鳴。
それはボグンという鈍い音に遮られて途切れた。
ぼくの目の前で、おとうさんはおかあさんを殺した。
恐かった。
おかあさんがいなくなって悲しいとか、次に自分がどうなるのか
よりも
いつも穏やかだったおとうさんが全くちがう人みたいになってしまったのがとにかく恐かった。
大きな大きなガラスの灰皿でおかあさんの頭をぶった時、おとうさんはちょっと戸惑ったような顔をした。
よその女の人と会っていたことを責められて責められて責められて、ついカッとなってしまったみたいだった。
おかあさんは動かなくなった。
この時まではまだ、おとうさんはおとうさんのままだった。
でもおかあさんが死んでいると分かってからのおとうさんは、ぼくの知っているおとうさんではなくなってしまった。
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