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おとうさんはおかあさんを担ぎ上げると台所からろうかへと出て行った。
すぐにおふろ場の方からびたーんっていう大きな音がしたから、たぶんおかあさんをおふろ場の床に落としたんだと思う。
おとうさんはすぐに台所にもどってきて、流し台の下のとびらを開けるとほうちょうを三本とり出した。
ほうちょうをテーブルの上に並べると今度はベランダに出て行って、しばらくしてからノコギリを持ってもどって来た。
そこでようやくぼくの方を見た。
ちょっとのあいだ、おとうさんはじっとじっとぼくのことを見ていたんだけど、けっきょく何も言わないままでほうちょうとノコギリをまとめて持つと台所から出て行った。
ぼくを見ていた目はもう完全におとうさんの目じゃなくて、それどころか何をかんがえているのかもおこっているのかも笑っているのかも泣いてるのかも分からなくて、まるで人間の目じゃないみたいだった。
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