レイゾウコ

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おふろ場のほうからはずっと水をながす音がしていた。 水道の音はとちゅうからシャワーの音に変わって、それもまた長いあいだ聞こえてきていたんだけど、気がつくといつの間にかやんでいた。 シャワーの音が止まってすこししてから、おとうさんはもどって来た。 おとうさんはぼくの目の前に立った。 口の笑いはきえて、かなりつかれているようすだったけど、目だけはやっぱりぎらぎらとこわく光っていた。 おとうさんはとつぜんぼくの口をこじあけた。 声なんて出すこともできない。 目いっぱいまでひらかれたぼくの口の中におとうさんは白いスーパーのビニールぶくろにつつまれた何かをむりやりおしこんできた。 中につつまれているモノは、ぐにゅぐにゅとしたゴムっぽいかんしょくのものだった。 だけど、つかれてふるえる手に、もう力が入らなかったのか、おとうさんはビニールのつつみを床におとしてしまった。 白っぽいかたまりがいくつもこぼれ出る。 かたまりにはつるりとした所と、ぎざぎざした所があってぎざぎざしたところはもも色がかっている。 あちらこちらに、はっとするぐらい白い所があったけど、それがおかあさんの体のどこのぶぶんなのかは、ぼくには分からなかった。
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