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『きゃあああーーーーっ』
『足りないな』
私の目の前にいる男性は、悲鳴をあげる私の事を無表情に見ながら淡々と話した。
『もっとだ、もっと聞いただけで男が絶頂に達するような悲鳴をあげるんだ!!』
『きゃあああああああーーーーーーーーっ』
『駄目だ、駄目だっ。そんなんじゃ絶頂は味わえない、もっと男が本来持ち合わせている、原始的な欲求を刺激するような悲鳴をあげるんだっ!!』
『きゃあああああああああああああーーーーーーーーーーーっ!!』
喉が張り裂けんばかりに私があげた悲鳴を聞いた男は、少しの間だけ考えてから。
『うん、大分良くなりましたね。一旦休憩にしましょう、お疲れ様です』
そう言うと男性、監督は、撮影現場の機材の画面を覗き込んで確認をしながら。
『テレビコマーシャルで、今の悲鳴は使えると思いますか?』
『難しいと思いますね、監督。最近は規制が厳しいですから。悲鳴を入れた場面を宣伝に使うなら、ネットで流す動画限定にした方が、抗議は少ないと思いますね』
私は蜂蜜入りの檸檬ジュースを飲みながら、映画は撮影だけでなく宣伝方法や売り込みも大変なんだなあと思いながら、次の出番を待つ事にした。
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