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それから二日後。
ようやく医師からの許可がおりて、私は自分達の赤ちゃんのところへ成瀬君に車椅子を押してもらいながら行った。
NICUの看護師さんに案内されて保育器の前まで行くと、そこにはすやすやと眠っている小さな赤ちゃんの姿があった。
赤ちゃんの体重が、ほんの少しだけ未熟児に該当するとされる重さだったのでNICUに一先ず移されたらしい。
けれど、すぐに出れるでしょうと看護師さんに告げられて、私はほっと胸を撫で下ろした。
赤ちゃんも抱っこ出来るというので、保育器から赤ちゃんを出してもらうことにした。
「可愛い……最初のうちって、本当におサルさんみたいなのね」
車椅子に座って、初めて見る我が子を抱きながら笑う。
「本当ですね」
成瀬君が私と赤ちゃんに向き合うようにしてしゃがみこみ、同じように笑う。
赤ちゃんの手元に成瀬君が人差し指をあてがうと、その小さな指が、成瀬君の指をしっかりと握る。
「ちっちゃいのに力強いですよ、この子」
自分の指を握りしめる赤ちゃんの手を見ながら、成瀬君が嬉しそうに目を細める。
そんな二人の姿を見ていて、胸がいっぱいになった。
「成瀬君、本当にありがとう」
私を好きになってくれて。
私が迷っても突き放しても、ずっと好きでいてくれて。
今ここにある幸せは、あなたが私にくれたものだから。
こんなにも、今の自分が好きだと思えるのは、あなたのお陰だから。
私のその言葉に、何故か成瀬君が少しだけ不服そうな顔をした。
私がどうしたのかと問いかけると、成瀬君が赤ちゃんに話しかけるようにして、そんな顔をした理由を答えた。
「君のママは、いつまで俺のことを成瀬君って呼ぶつもりなんだろうね」
その言葉に、私は小さくあっと声を上げた。私の顔を見上げると、成瀬君がすました顔で笑う。
「そろそろ、名前で呼んでもらえますか?」
ニヒルな笑顔でそう提案する私の王子様に。
私は少し照れながら、その言葉を紡いだ。
「亮……ありがとう。大好きよ」
ーーENDーー
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