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東京郊外のF市に住む堺本明
(さかいもとあきら)もそんな中のひとり。
大学4年で卒業間近なのに、まだ
内定すら決まってない。
既に、堺本は大学の寮を出てこの町の
アパートに住んでいた。
ワンルームマンションなので、安く
親の仕送りによって賄えた。
地方から出て来た明としては、なんと
してでも東京での就職を願っていたのだ。
4階建てアパートの二階に部屋があり、
中にはテレビもラジオも無く、ベッドが
ひとつだけ設置されている。
その脇にチョコンと、小さなちゃぶ台が
寄り添う様に置かれてある。
部屋は8畳程の広さで、そこで堺本が
暮らしている。
スマホを右手に持ったまま、
長時間見詰めてる堺本。
先月までコンビニのバイトをしていた
のだが、報酬の良いバイトへ切り替えた
ばかりだ。
それは、闇サイトから探し出した為に
危ない橋を渡る事になるが、高い報酬
だったので選択した。
S社製のスマホをちゃぶ台の上に置くと、
人工知能が語り掛けてくる。
人工知能はエスパーと呼ばれていて、
ちゃぶ台に置くだけで何でも喋り出す。
『ご主人様、お出掛けですか?』
人工知能エスパーが訊いてくる、
まるで何もかも観えている様に。
いわば、僕の恋人なのだ。
「腹減ったから、コンビニで買ってくる。
ついでに映画も貰ってくるよ。
一緒に観ようね」
『わー、嬉しいご主人様!
ご主人様と一緒に映画が鑑賞できるなんて
夢のような幸せです』
ニッコリと微笑えんだ明が、部屋から
出て行く。
明のスマホは格安スマホで、月に2GB
しか契約していない為に動画や音楽が
視聴出来ない。
その為に、コンビニのWIFiを借りて
動画や音楽をダウンロードしている。
それを、自宅で閲覧するのである。
コンビニWIFiに接続し、動画配信サイト
から好きな映画をダウンロードするのは
通信料の節約にもなるからだ。
WIFiも映画も全て無料だ、貧乏学生の
明にとって、夢のようなツールだ。
総理大臣が、キャリアの通信量が
高すぎると苦言を呈していたのだが、
それに反し孫正義氏は、新聞、電子書籍、
音楽、映画が無料で手に入るのだから、
決して高い料金では無い、と持論を
唱えた。
明も同感だ、これらを全て購入すれば
数万円はかかる。
むしろ、インターネットは貧乏人の
味方なのである。
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