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雪は、生まれて物心ついた時から、俺の知る限りいつも、綺麗で可愛かった。愛想はないが、整った顔立ちと体型で、いつも周囲から一目置かれ、時には妬まれ、先入観を持たれていた。
可愛いから、人に好かれる。注目される。声をかけられる。からかわれる。
それは当たり前の事だから、と。
幼少から何度となく、連れ去り、付き纏いに遭いかける度に、母親や教師に助けを求める雪を
オトナはいつもまともに相手にしなかった。
かわいいから、と。 目立つから、と。 いつも、一人でいるから、と。
「ひなこちゃんが目の前で、男の人に連れて行かれそうになった!」
ある日、雪は大人達にそう言った。
確かに目の前で、ひなこが知らない男に手を付かまれて連れて行かれそうになったのを、雪の他にも見ている者がいて、それで街は結構な大騒ぎになった。
街で見回りが強化され、変質者の数はぐんと減った。
雪は、俺と健人にぼやいた。
「誰も何もしてくれないと思った。ひなこちゃんだけ、私の事を助けてくれた」
その時は意味が分からなかったが、時間をかけて、俺は理解した。
自分の身を守る術を持たないコドモにとって、自分の思い通りにならない障害を取り除く事の難しさとありがたみは、計り知れない。
『雪』にとっても、俺にとっても、『ひなこ』は神がかりの存在になった。
あの状況で、『雪』の状況を救ったのは、『ひなこ』の災難だったのだから。
「貴志。私、ひなこちゃんの事好きだから」
『雪』は、時々俺に言った。
少し変わった性格で、多くの友達を作らず控えめな女の子だったひなこを、『雪』は陰ながら可愛がっていた。
見た目の美しさで他人からやっかまれ、群れる事を嫌い、別の意味で友達の少ない『雪』は『ひなこ』だけは特別扱いした。
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