第二話 雪の悲鳴

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18歳の時、雪は実家を出て一人暮らしを始めた。 雪が幼い頃に離婚した母親が医者と再婚したのと、雪が卒業後の進路を看護師から保育士へ変えたのをきっかけに母娘の中が破たんした事が原因だった。 母親は看護科のある高校を卒業し大学進学を経て雪が看護師になる事以外の進路を受け入れられなかった。 雪は、女で一つで自分を育てて来た母が、今更、妻子ある家庭の男を離婚させた末に再婚しようとする事を受け入れられなかった。 再婚相手が離婚する際、相手の妻子が家に怒鳴り込んで来たのが、決定打となった。 雪の家に子供を連れて乗り込んで来た時、玄関先で母親と一緒に元妻に髪を掴まれ二人がなじられたのは、近所の噂になる程だった。 それでも、高校卒業後、奨学金とホステスのバイトで専門学校に通い、晴れて地元の認可保育園に就職した。 高校卒業の寸前、雪はまたひなこに救われた。 「私、高校は泉川女子に行くんだ」 ひなこの話に、雪は夢中でひなこに問いただした。 「ええ!! 何で? 家業を継いで、理容学校に行くと思ってたよ」 「ん~ん、行かないよ。だって、私は普通に就職して、普通に結婚して、普通に子育てしたいの。私、本当にやりたい事、勘違いしてた。私は、自分の居場所がなくなる様な職業は選びたくない」 将来、自分と同じ思いを子供にさせたくないから。 そう言い切るひなこに、雪は泣き笑いした。 「ひなこちゃん! ひなこちゃん、すごいよ!」 「どうしたの雪さん?」 突然泣き出す雪に狼狽えるひなこを雪は抱き締めた。 「雪さん?」 「ひなこちゃん、大好き。ひなこちゃんの事、私大好きだから」
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