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道子が振り向くと、そこには時代劇、それも平安時代の貴族のような格好をした、いかにも怪しい人物。
「なによ。私が愛してるのは時男だけなんだから!あんたの安っぽい誘惑なんて乗らないんだからね!
どっか行きなさいよ!」
春雄を失った衝撃が強すぎて、目の前の人物が明らかにおかしな格好をしている怪しい人だという感覚が欠落している道子。
時男との最後の時を邪魔されまいと大声で威嚇をする。
この時、道子は気がつかなければいけなかった。
いかに警備が厳重ではない霊安室といえど、監視カメラはある。
そもそも、このような珍妙な格好の人物が病院に入ることなど、不可能なのだと。
「これはこれは。
お嬢さん、私はそのような陳腐な事はいたしませんよ。
彼を生き返らせてあげようと言っているのです」
「え?」
絶望の最中に灯された、一筋の光明。
もう、道子に目の前の人物を不審に思う事など出来なくなっていた。
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