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ナイフは、まるで、何かに導かれるように、正確に看護士の心臓を貫いた。
声を出す間もなく、その場に倒れた看護士。
その白衣は深紅に染まっていくも、そんなもの気にもせず、キラキラした目で和装の人物を見る道子。
「これで、これで、生き返るのよね?」
しかし、和装の人物は首を横に振る。
「代わりに死ぬとはいっても、それは誰でもいいわけではありません。
生き返らせたい者と同程度の魂と釣り合う価値がなければダメなのですよ」
「そんな……」
絶望からの希望、そして、再びの絶望。
愛する時男のために人まで殺しておきながら、その結果は変わらない。
残酷な宣告に、がっくりと肩をおとす道子だが、和装の人物はその耳許に悪魔の囁きをした。
「ここにいますよ。
彼と釣り合う魂の持ち主が」
その言葉に大きく目を開く道子。
「えぇ、ここにいますとと。
彼とお似合いだった貴女が。
これから彼と運命を供にしようとしていた貴女なら、ピッタリ釣り合います」
「ほ、ほんとに?」
「えぇ」
すると道子は、看護士の胸に突き刺さっていたナイフを引き抜くと、躊躇いなく自分の胸に刺した。
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