中野香夜

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問題は宮城野知春だ。 「3年……」 あまりにも短い。斉賀を傷つけたから懲役刑になったのはわかる。だけど、3年ってすぐ出てくるじゃん……。 悪いけど、3年じゃ足りないというのが俺の意見だった。 これ、中野ちゃんも見たのかなぁ……。 中野ちゃんはどう思っただろう? どこにいるんだよ……。 「『BlackX'mas』のニュース載ってる! あれ、あたし応募してたんだよね」 「でも、意図的でメンバー選ばれてたんでしょ? 選ばれた方とか可哀想。高校生の子が中心だったのに、3年ってなんか短く感じない?」 目の前にいる俺と同じくらいの歳の女子高生がそんな会話をしている。まさか当事者が目の前にいるなんて思いもしていないだろう。 「精神的に追い込んで、一人は精神的に参っちゃったらしいよ。その場合も、それなりに懲役つくとかネットにあったんだけどなー」 「苛められてた分、軽くしてもらったんじゃないの?」 「高校のいじめは勘違いだったのに?」 「でも、先生がよく言ってんじゃん。虐められたと思った人がいたら、もうイジメだって」 耳が痛い会話に早く駅につかないか確認する。だけど、俺が降りるのは後3つ先だ。 「イジメの定義ってなんなの? てか、虐められたからー、犯罪しちゃうってヤバくない? しかも関係ない人もいたんだし」 「ただのエゴでしょ。精神的に参っちゃった子って、その子のことイジメから守ってたらしいし」 「えー!? 何それー!!」 声がどんどん大きくなる女子高生は、周りが冷たい視線を浴びせる。 女子高生はお構いなしに、話し続けていた。 イジメの定義なんてどうでもいい。問題は、なんでイジメていた奴より、中野ちゃんや山口さんが傷つかなきゃならなかったのかだ。 宮城野は結局イジメ以上のことを彼女たちにした。 それを懲役3年というのが信じられないんだ。
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