中野香夜

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駅を降りて、家に向かう。中野ちゃんはどこの通信高校に通っているんだろう。 家に帰ってから、俺はパソコンを開いた。 とりあえず、首都圏の通信高校を探す。中野ちゃんの性格を考えて、絞りに絞ったけど、まだ何百と候補が上がった。 意外と通信ってあるんだな。 待てよ。通信高校も立派な高校だ。てことは、転校という形になる。 つまり、知っている人物が近くにいるわけだ。 「なんだよ……。濱口に聞けば良かったじゃん……」 濱口は俺たちの担任だ。理科の先生で変わってるけど、信用できる人だ。 一気に脱力した。俺は疲れを感じながら、ベッドに身を投げた。 目を瞑る。 1ヶ月前の病院を思い出した。あのとき、中野ちゃんは抱き締めても拒まなかったし、キスだって拒まなかった。 多分俺を拒めなかったんだと思う。 でも、頑なに付き合うことだけは拒んだ。なんといっても、頷いてくれなかった。 あんな事件さえなければ……。 俺はしばしばそう考える。でも、あの事件があったから、やっと気持ちを伝えられたのは確かだ。 事件がなかったら、俺はいつも通り、中野ちゃんを目で追っかけて終わっていたのかもしれない。 目を開けて、寝返りを打つ。
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