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「なに、フラれたの?」
顔を覗かせる照屋は少しおもしろがっていた。多分、冗談のつもりで言ってきたに違いない。木村だったら本気で言ってただろうけど。
「……中野ちゃんのメアド知ってる?」
フラれたのを認めたくなくて、俺は照屋に問う。
その言葉の意味がわかったのか、照屋は少しずつ表情を固くしていった。
「……え? メアド変わってるの?」
驚きを隠せないのか、照屋は自分の携帯を取り出し、打ち込みをはじめる。多分、中野ちゃんにメールを送るつもりだろう。
しかし、結果は俺と同じ。
ますます照屋の表情はひきつる。
「てことは、俺たちは縁切られたってこと?」
「そうだろうな……。中野ちゃんなら……」
ありえる。ぶっちゃけやりかねない。
別に俺たちを嫌いになったわけじゃない。
周りが傷つくなら、自分が傷つくのを選ぶ性格なのは、『BlackX'mas』の事件でよくわかった。
ならば、俺たちに再び魔の手が伸びないように、ネットワークを遮断させてるということになる。
「山口さんは?」
「おお。ちょっと聞いてみる」
照屋が山口さんの名前を出したから、俺も反応して、『山口満里』のメアドをクリックし、メールを作成した。
『山口さん元気?
俺は2週間前に退院しました!
で、本題。中野ちゃんのメアドって変わったの?
変わってたら、教えて!!』
山口さんは、中野ちゃんの親友だ。
『BlackX'mas』の被害者。
中野ちゃんとの仲が良いのを、宮城野はよく思わず、山口さんまで巻き込んだのだ。全くの無関係なのに。
山口さんから返事を待っている間、俺は島原さんに話しかけた。島原さんは、中野ちゃんのソフトボール部の仲間だ。
「なに? どうしたの?」
普段あまり接点がないから、不審がられた。首をかしげている。
「あのさ……、中野ちゃんのメアド知ってる?」
そう聞くと、島原さんはハッとした表情を見せた。そして、首をゆっくりと横に振る。そのときの表情はすごく悲しそうで、これ以上突っ込んでいいのか迷った。
けど、彼女が自分から話してくれた。
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