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「その様子だと、山口さんも一緒だったの?」
「メール届かなくて、どうしようだって」
照屋が心配した様子できた。俺はため息をつく。
試しにさっき、携帯番号にも電話したけど、繋がらなかった。『お掛けになった番号は現在使われておりません』と。
中野ちゃんのこと大好きだし、性格もよくわかっているけど、案外知らないことが多い。
今じゃメアドも知らない。携帯番号も知らない。家も知らない。転校先も知らない。
これもう他人じゃん。
「お前、中野のことで悩んでんの?」
加藤が話しかけてきた。俺はムスッとしながら、顔を上げる。
加藤は苦笑した。
「まあ、拒否られたってことは、中野は一からやり直す決意をしたってことだろ」
その言葉に俺は一気に脱力した。机に顔をひれ伏せる。
「お前、中野いないと生きられないのかよ」
木村がからかってきた。
お前らなんかに、俺の気持ちがわかってたまるかよ。
どんな決意で、中野ちゃんに告白を続けようとしてたか、こいつらは知らない。
中野ちゃんも知らない。
いや、知ってたのか。知ってたから、あのとき、俺に笑顔をくれたのか。
そして、もう諦められるようにメアドを変えたのか。俺から誘いが来たら、多分、断れないと思ったんだろうな。
「てかさ、両想いなのにフラれるとか、さすが相場だよな」
木村が追い詰めてくる。知らねぇよ。さすがってなんだよ。投げやりになりそうなところで、加藤が唐突に提案してきた。
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