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「まあ、事件の被害者を探すのは骨が折れるよな」
「え?」
「中野は半年休んでて、留年してる可能性があるわけだろ。それに、被害者は名前を変えて生きてる可能性だってあるわけだし……」
南条の言葉に俺は食べていた唐揚げを落とした。
当たり前のように言ってるけど、今、なんて言った?
「ごめん。最後のもう一回言って」
「だから、名前を変えて生きてる可能性が……」
「誰が?」
「え、中野が」
「そんな簡単に名前って変えられんのか?」
「中野はあの『BlackX'mas』の一番とも言える被害者だろ? 本人にとって都合が悪ければ、すぐに受理されるだろ」
その言葉に、俺は、ごくりと息を飲んだ。
思い出したのは、いつしか、中野ちゃんだと思って追いかけた女の子のことだ。
名前を変えて、学年も一つ下であったとすれば、本当にあれは中野ちゃんではなく、赤の他人だったのだろうか。
もしかしてあれは本当に……、
中野ちゃんだったんじゃないか?
ドッドッと何かが押し寄せてくる。
こっちを振り向いてくれなかったのは、俺に気づいてたからじゃないか?
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