思い出のロケット

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『キャァァァァ・・・』  笹山凛子は布団を跳ね飛ばしながら、自らの悲鳴で飛び起きた。  額に浮かぶ汗をパジャマの袖で拭うと、一つ大きな呼吸をしてから右手で頭を抱えた。 「また・・・、同じ夢を見るなんて・・・」  凛子は布団から出るとおぼつか無い足取りでキッチンへ向かい、流し脇に無造作に置かれたグラスを手に取り、水道の蛇口を開いて水をグラス一杯に満たし、それを一気に飲み干した。  もう一度、目を閉じようとベッドに戻るが眠る気にもなれず、ふと、暗闇の中でカーテンを開き、夜空を見上げた。 「星になって・・・、もう一年経つのに・・・。私の心は・・・。時計は止まったまま」  凛子の目に映る夜空に、一つの星が輝きを増した。 「私が欲しいのは・・・、アナタの温もり。同情じゃないのよ・・・、馬鹿」  凛子はそう言うと、一気にカーテンを閉めて頭から布団にくるまって眠りに就こうと目を瞑ってみるのだった。    *   *   * 「キャァァァァァ!」  店内に大きな悲鳴がこだまする。 「そんなに驚かなくたっていいじゃない・・・」と店長が手渡した封筒の中身を見て、嬉しい悲鳴を挙げた沙希をたしなめた。 「でも店長・・・。私、こんなにもらえるとは思っていなかったし、それに、私の発案でお店の中をこんなに改装までしてもらっちゃって・・・。大丈夫ですか?」  沙希はこの日、お店でバイトを始めて最初の給料を手渡しでもらった。その嬉しさと興奮のあまり、何度も繰り返し地団駄を踏みながら、キャアキャアと騒いでいたのだ。 「大丈夫だよ。沙希ちゃんのアドバイスでカフェスペースを作ったお陰で、お客様も少しは増えたし、何より雑貨も少しは売れるしね。それに、僕の本業の方の仕事にも集中できるし・・・」 「そうだ。藤村店長の本業って何ですか?この前も聞いたけど、教えてくれませんでしたよね・・・」と松岡沙希が言葉にすると、藤村店長は、「それは秘密・・・」と言って、人差し指を立てて唇に当てた。  それは、ナイショというポーズである。 「そこはケチだな・・・。店長は・・・」と沙希が口を尖らせて言った時、店の扉が開いて外から一人の女性客が入って来た。
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