序章

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「また今日も退屈だなあ。退屈、退屈。」 秋ヶ瀬公園で堤防のコンクリートの上に寝そべって荒川の水面と 子供達のサッカーの白熱した 試合を交互に眺めながらミネラルウオーターのペットボトルを片手に 呟く中年男がいた。 男の名は桜田門隼人(さくらだもんはやと) 西暦2019年初頭、日本政府の緊急勅令ともいうべき 「正社員制度廃止令」という法令で23年務めた リサーチ・アンド・サイエンティフィック社を 隼人はあっさりと職位を剥奪され解雇された。  解雇の理由は、翌月から人工頭脳=AIが彼の代わりに執務する為 という受け入れ難いものだった。 この法令は俗称「AI解雇法」と呼ばれ、後任がAIであれば職位を問わず即解雇可能 後続の補償義務なしというものだった。 4年ほど前から人工頭脳だ、AIだとしきりに経済新聞やテレビ放送などを報道で 賑わすようになっていたが、殆どの庶民は 過去のAIブーム同様に一過性のものだろうと たかをくくっていた。 AIは凄まじい勢いで進化し、 AI搭載のロボットが人間の最上位クラスの格闘家をいとも 簡単にねじ伏せたり、ビジネスの場ではCEO、CFO等 がAIのビジネスブレインに代わったりしていた。
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