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隼人は夕焼けの荒川を眺めながら大きく
背伸びをしあくびをして立ち去ろうとした。
突然、目の前に黒い影が立ち塞がり、
素早く隼人の視界を暗闇で覆った。
「なんだ、お前は。」
隼人は素早くファイティングポーズを取り、
両手両足で黒い影と暗闇を薙ぎ払おうと
格闘するが、
黒い影には実体がないかのように拳や脚は素通りする。
「私は、貴殿の味方です。」
黒い影から男とも女とも判断のつかない声で返答があった。
黒い影は更に隼人の両手両足の自由を奪い
身動きができないように拘束する。
空手や合気道の格闘術をもってしても、
全く歯が立たない。
「なに言ってるんだ。こんな妙な金縛りのような
嫌がらせをしやがって。」
「貴殿の名は、桜田門隼人殿。退屈で退屈とのことですので。
お悩みの解決の手助けにまいりました。」
「わかったぞ。新手のAIだな。ついに俺を社会不適格者として
始末しに来たんだろう!
うおおおおおおおっ!!」隼人は全身全霊を使って
黒い影の金縛りを排除しようと力む。
バリバリという音と共に暗闇の金縛りは崩れ去った。
明るい光が差し、視界は開けたが、視界にあるものは
寝そべっていた荒川の堤防ではなく、
コスモスのような草花が一面に広がる花畑だった。
黒い影は、中世の騎士のような漆黒の甲冑に姿を変えていた。
フルフェイスの兜を装備しているので
顔も性別も判らない。
「まだ、手品の続きがあるのかよ。
味方というのはどういうことだ。俺の味方なんて
誰もいやしねえ。
俺の名と居場所ををどこで仕入れてきたんだ。」
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