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隼人はファイティングポーズを解き、花畑に座り込んだ。
「あなたは、非常に高い志をお持ちです。武道で心身を鍛え、
学問やビジネスにも精通し常に研鑽を怠らない人物。」
「そんな立派な者じゃないないがな。」
「しかし、西暦2019年の世では、電子頭脳は人間の能力を完全に凌駕し、
あなたの研鑽は水泡に帰してしまっています。そして退屈だけが残っている状態。」
「言ってくれるじゃないか。本当だから言い返せないが。」
「しかし、名乗らないお前は何者だ。」
「私の名はソラリス。
創世の意志とでも申し上げればよろしいかと思います。」
「面白くないな。
創世の黒騎士とでも言えば恰好付くんじゃないか。
で、俺にどう味方して何かを提案してくれるのかな?」
隼人が腕組みをして甲冑姿の黒騎士を見据えた。
「貴殿に提案するものは新しい冒険の旅です。
丁度会社員という職業も飽きてきたので
ご退職されたのではありませんか。」
「何を言ってるんだ。お前の手品みたいなもので、
リサーチ・アンド・サイエンティフィック社の
事業部長に戻してくれよ。
これからイノベーションを興してやるんだよ。
イノベーション!イノベーション!
そういう予定になっていたんだよ。」
「それは予定でなく貴殿の脳内で起こっている妄想であり
不可能です。
残念ながらご希望に沿うことはできません。」
「わかったよ。それで、新しい冒険の旅というのは何だ?」
「私達の棲む世界にご来訪いただき、活躍をして欲しいのです。
人工頭脳の無い世界です。勿論、人生における御経験を鑑みて、
相応のポジションは予め用意いたしますのでご安心ください。」
「今流行のペーペーで新人君から毎度毎度やり直し
オジサンってのは無いよな。
念には念を入れて聞くぞ。」
「絶対にありません。」
「判った。では新しい冒険の旅とやらに連れて行ってくれ。
何か準備するものは無いか。
旅に出るのだから家に現金や
荷物を取りに言ってくる。」
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