心揺らぐ夜

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運転手は「大楠ですね」と返し、タクシーを発進させた。 やっぱり近かね。 流れる景色を眺めながら思った。高砂と大楠、そう遠くはない。そのことに僕の心は揺らいでいた。こんな風に心が揺らぐのは一体何年ぶりだろう。 ……3年ぶりか。 思い出した途端、胸の奥底が疼いた。3年前、僕は当時つきあっていた女性との別れを経験した。そろそろ結婚をと考えていただけに、その別れはこたえた。 もう一生独りでいい。 あの別れ以降、僕はそう思って生きてきた。そしていつしか独りに馴れていた。 独りも悪くない。 心底そう思えるようになった頃だった。翔子さんの口から「古賀真奈美」という名前を聞いたのは。
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