ひとつのカノウセイ

10/10
前へ
/10ページ
次へ
その答えに安心したのか彼の表情は柔らかくなって約束だからなという彼に私も約束だからねと返して歩みを止めていた足を一緒に踏み出した。 だけど、この約束が守られることはきっとない。 土曜日の朝に彼からメールがくる。 タイトル名はごめん。 それだけで私は内容まで目を通さずにメールを削除する。彼との時間は金曜日の夜だけと決まっているから。土曜日になれば2人とも夢から覚めたように現実世界に戻る。 でも、毎回。今回は違うかもしれないと期待しながら金曜日の夜を過ごして土曜日の朝を迎える。今日もいい夢が見れそうだと言い聞かせるように駅への道を進む。 カノウセイはゼロじゃない。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加