ひとつのカノウセイ

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マスターが居なくなってからはドゲドゲしいオーラもなくなりいつも通りの彼に戻るとグラスを少しあげてあわせてゴクリと飲み込む彼の横顔を眺めた。 「ハナはいつも最初の1杯目を飲む時、俺を見ているよね」 流し目でこちらをチラリと見ながらそう言い放った彼の瞳に吸いこまれそうになる。 「そうかしら?」 そう返事をして私もグラスに口をつけた。 同僚と仕事終わりにご飯をして話し足りなくてバーに行くことがあるけれどその度にここの味を思い出して恋しくなる。 早く、ホラー映画の日がやってこないかと柄にもなくカレンダーにバツをつけてしまっているのは私だけのヒミツだ。 彼に会いたいが故の恋しさなのか、それともただ単純にお酒が好きなだけなのか。分からないふりをしている。
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