TK=Town King grew up(里帰り)

19/22
前へ
/25ページ
次へ
3月の朝はまだ、空気がひんやりとする。 ミヤは隣でいつの間にか寝ていた。 ギンガは、茶の間で寝ていた。 ミヤが布団をかけたのだろうか。 3月はまだ、寒い。 囲炉裏の炭を足して、台所にあった食器を洗って片付けた。 起きる様子のない二人をおいて、早朝の村を一人散策する。 観光客が乗った馬車が到着するまで、それぞれの店で慌ただしく準備が進む。 立ち並ぶ店を順番に見ていく。見知った顔は少ない。ほぼ、村外の人間か、移住した人間か。 「おはようさん」 店のおじさんがリーナに気づいて声をかけてくれる。 「初めて見る顔だけど、どこの子かね?」 ふふふ、と悲しく笑う。 いつの間にか、村のつがいがよそ者だ。 「村長のギンガの友達なの」 へぇ、そうかい、とおじさんは笑って、できたばっかの唐揚げをくれた。 「村長とつがいのおかげで、今日も商売ができる。」 「毎日、トッカから通ってるんだが」 「ここには、一生住めない」 「一生よそもんだから」 リーナはそう、と呟く。 移住制限するのは、多分あたしたちのためだ。 あたしたちがいた頃の雰囲気を壊さないように。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加