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3月の朝はまだ、空気がひんやりとする。
ミヤは隣でいつの間にか寝ていた。
ギンガは、茶の間で寝ていた。
ミヤが布団をかけたのだろうか。
3月はまだ、寒い。
囲炉裏の炭を足して、台所にあった食器を洗って片付けた。
起きる様子のない二人をおいて、早朝の村を一人散策する。
観光客が乗った馬車が到着するまで、それぞれの店で慌ただしく準備が進む。
立ち並ぶ店を順番に見ていく。見知った顔は少ない。ほぼ、村外の人間か、移住した人間か。
「おはようさん」
店のおじさんがリーナに気づいて声をかけてくれる。
「初めて見る顔だけど、どこの子かね?」
ふふふ、と悲しく笑う。
いつの間にか、村のつがいがよそ者だ。
「村長のギンガの友達なの」
へぇ、そうかい、とおじさんは笑って、できたばっかの唐揚げをくれた。
「村長とつがいのおかげで、今日も商売ができる。」
「毎日、トッカから通ってるんだが」
「ここには、一生住めない」
「一生よそもんだから」
リーナはそう、と呟く。
移住制限するのは、多分あたしたちのためだ。
あたしたちがいた頃の雰囲気を壊さないように。
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