TK=Town King grew up(里帰り)

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立ち並ぶ店の中で、一ヶ所だけ、雰囲気の異なる店を見つける。地面にゴザを敷いただけの粗末で簡易的な店。 「おじいさん、ここには店を出さないで」 リーナは思いきって声をかける。 少し薄汚い格好の露店商のおじいさんは、ちらりとリーナを見る。 「ああ?」 リーナは、すぐ後ろの垂れ桜を指差す。 「この村にある、桜や楠とかの樹木の回りにはすべて魔方陣を書いてあるの」 「関係ねーや、あっちいけっ」 「海からの塩気のある風で、枝を痛めないようにしてあるの」 「うっせー、な!」 おじいさんが立ち上がる。 都では絶対言わないけど。 「あたしを誰だと思ってる!」 この村の草木一本まで。 ミヤにも頼らず、将族がいなくても。 この村を守る覚悟。 おじいさんに胸ぐらを捕まれる。 右翁左翁が出ないように、静かに。 垂れ桜の周りの魔方陣だけを灯らせる。 「村のすべて、私の管理下である」 おじいさんの足元が崩れる。 後ろから手が伸びて、おじいさんの手がリーナの胸ぐらから離れる。 「おいっ!」 「ギンガ!」 すぐ後ろにギンガ。とその後ろに隠れるように将皇が一瞬見えた。 「どうする?このじじい?」 「診療所へ」 「はあ?」 「右半身に麻痺があって、右耳は機能してない」 「薬の効き目を一旦切らしただけだから」 ああ、うんとギンガは頷く。
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