1人が本棚に入れています
本棚に追加
ミヤとギンガは、村の真ん中にある楠の前に立つ。
「村の中心は、ここから徐々に移動してる」
「観光客が増えて、少し離れた田畑を潰して」
「そっちに店を出してる」
「こっちには観光客の騒がしさが嫌なじいさん連中くらいしか」
「残ってない」
静かに楠の葉が揺れるのみ。
この村にいるはずのつがい。
「前村長の葬式も」
「お前の就任も」
「欠席で、ごめんな」
「お前いたら、村長なれねーよ、オレ」
ミヤは、確かに、と笑う。
ミヤは、楠にそっと触れる。
この楠の廻りに、数えきれないほどの魔方陣。
忘れられない"冬"の記憶。
楠から少し離れて、下から幹を見上げる。
この村の本当の守り神。
だと、思う。
最初のコメントを投稿しよう!