後世へ

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「次は、どこに行きたい?」 あの体験をして半年。それから毎月上司にそう言われるようになった。 僕はオカルト好きの部下に代わって『必ず危険が起こる心霊スポット巡り』の担当を続けていた。入院していた部下が無事退院したにも関わらずだ。決して僕が立候補したわけじゃない。上司の命令だ。断ることなんてできない。 ただ、少し嬉しかった。そう感じたのは、確実にあの体験のおかげだと思う。 死者の漂う場所は、それだけ生きた証が存在した場所だ。僕がこうして生きているように、皆も一生懸命生きてきたはずだ。それを少しでも知ることができるのは、僕の財産になっていくのかもしれない。 「次はここに行きたいんです」 彼らの無念を少しでも晴らせればいい。それはただの独りよがりの意見だ。 でも、中には僕と同じ意見の人も、いるんじゃないだろうか。 あの集落にはあれから男の子と老女、そしてその他の亡くなった人々のお墓が建った。毎年僕はそこにお墓参りに行っている。そして、そこで彼のことを想い目を閉じると、彼が笑顔で遊ぶ姿が浮かぶんだ。その側には、いつも笑顔の老女もいる。 独りよがりだとしても、それでいい。 そうしてまた、新たな無念と出会うため、僕は足を運ぶ。
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