卵ころころ

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   卵ころころ  ころころ転がる卵が一つここに。  ころころ、ころころ、と柔らかい巣でころころと。  その卵はいつしか大空へ飛ぶ夢を、卵の殻の中から眺めている。    ころころと転がるうちに、酔ってしまい大空を勇ましく飛んでる自分に酔いしれる。  「おい、あの鳥が飛んでるところを見たか?」  ころころ、ころころと。飛び方知らず転がる。  「嗚呼、この卵は駄目だ。この鳥に殻は破れない」  ころころと、無常の時が無駄に流れ無為に過ごす。  一言も書き出さず、開かれない本のまま長い物語は、一人の人間の手元で死んでいく。
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