ただ、想い続けるだけなら。

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 目を覚ましたら、ソファに毛布を掛けられて眠っていた。  見渡しても見慣れない風景。  ふと、純太郎の家だと思い出す。 (やっぱり夢……だった?)  窓の外に目を向ければ、そこにはTシャツ姿での純太郎の姿があった。ベランダに腕をかけて、たばこはくわえたまま、ぼんやりと遠くを見ている。 (ヤッた後は煙草を吸うって誰かが言ってたな)  そんなことを思い出しながら、その横顔を見ていた。 「痛っ……」  ちりっと痛んだ肩をそっとなぞると擦り傷のように傷ができていた。吸われただけでなく、多少噛まれたのも覚えている。間違いなく、これは純太郎の所有の証。その傷を撫でながら、やはり夢じゃなかったのだと、目元が緩む。 「起きた?」  ベランダが開いて。純太郎が部屋に戻ってきた。黒いTシャツにボクサーパンツ、そこから伸びた、たくましい腕と脚。この体に抱かれたのだと思うと、まるで他人事のような気がする。 純太郎は要の隣に、ソファに毛布の上からどかりと腰かけた。 「痛くないか?」  心配そうに、要が触れている肩口に目を落とす。 「なんか、これのおかげで夢じゃないんだって思ってたところです」 「夢になんてさせるかよ」  純太郎の大きな手が要の頭をくしゃりと撫でる。その手はそのまま要の肩を抱いて、自分に引き寄せた。純太郎の胸にもたれかかるように、要はその腕におさまった。 「引っ越したばかりなんですか?」 「ああ、先週」 「へえ」 「俺、今まで実家で親父と二人暮らしだったから」  何か、きっかけがあったのだろうか。そういえば一人で住むには部屋が広いし、建物もファミリー向けのようで、純太郎にはなんだか不似合いの建物だ。 「ちゃんと片付いたらおまえ呼ぶはずだったのに、予定がくるっちまった」 「え?」 「おまえ、今日からここに住め」 「はぁ?何言って……」  思わず純太郎の顔を見る。 「おまえは覚悟決めて仕事やめたんだろ。それ聞いて俺も覚悟決めたんだ」 「もしかして、引っ越しって僕のため……?」 「当たり前だろ」 (この人は……まったく)  自分をいつか迎えるための覚悟を決めて、この広い部屋を用意してくれた。会えない間、純太郎も自分のことを考えてくれていたのかと思うとたまらない気持ちになる。あの大きなベッドも本当に自分のためと思うと、それはとても恥ずかしくなるけれど。
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