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その知らせは突然、純太郎の耳に飛び込んできた。
「純太郎さん、そういえば要のこと頼みますね」
「なんでぇ、急に」
要の兄、徹と接待の下見ということで、キャバクラの新規開拓に付き合ったその後、二軒目のラーメン屋で、徹が突然頭を下げたのだ。
「要、今日正式に退職届が受理されたって。おそらく来月末に辞めるんじゃないかと」
「は?会社辞めるって、どういうことだよ」
「あれ?あいつ純太郎さんに言ってませんでした?やべ、これ内緒だったかな」
「おい、徹。事と次第によっては、許さねえぞ」
徹はうっかり口を滑らせてしまったらしく、慌てていたが、多くを語ろうとしなかった。
(会社辞めるって……何、考えてんだ、要)
目の前に出されたラーメンは、まったく味がしなかった。
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