ただ、想い続けるだけなら。

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「あっ、その、少し実家で休んでから、こっちで就職探そうかなって」 「ふーん」  どうせ後から怒られるのだろうから、いつ言っても同じだろう。  要は意を決した。 「森中工務店の求人があれば受けてみようと思います」 「……」 「受かるか、わかりませんけど」  その言葉に答えは返ってこなかった。そもそも森中工務店は求人を出しているかどうかなんて調べてもいなかった。今の会社を辞めると言い出すことがそもそも怖かったのだから、再就職の話なんて言い出せるはずもない。  そのまま無言のまま、軽トラは要のマンションの前で停車した。一度も一緒に家まで来たことなんてなかったのに道を聞かれずに辿りついて驚いたが、以前純太郎に決別されたとき、自分の後をつけてきたと聞いたことがある。あのとき、純太郎が自分にキツイ言葉をかけてしまったから心配になったと言っていた。  そんな優しい人だから、こうして自分が仕事をやめたいと言うのを怒ってくれるのは、心配してくれているからこそだと理解している。 (辞めた理由を聞いたら、不純過ぎてさらに怒られてしまうだろうな)  軽トラが停車してしばらくたったが、要も純太郎も黙ったままだった。このままここにいるのも、と思い、要は助手席のカギを開けてドアを開けた。 「送っていただいて、ありがとうございました」  純太郎は微動だにしなかった。 「……じゃあな」 「はい」 (これっきりになるのかもしれない)  ひとまず、自分が落ち着いたらきちんと話に行こう。そう考えて、要は少し高い助手席から飛び降りようにして車を降り、運転席を振り返ることなく小走りにマンションへ急いだ。
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