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息が荒くなる。
肩掛けの鞄を持つ手に力が入る。
真冬だというのにその掌にはうっすらと汗をかいていた。
角を曲がりアパートが見えたところで私は意を決して走り出した。
扉の前にたどりつき、鞄から鍵を取り出す。
「落ち着いて、落ち着いて」
心で唱えたつもりの言葉が音声として私の口から発せられた。
あせっていることは自分でも気が付いていた。
震えを制するように荒く扉をあけるとその中に滑り込み、鍵をかけた。
ややあってチェーンロックもかける。
なおも私の心臓は早鐘を打つ。
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