第二章

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秋の終りの気配、凛とした空気を吸い込み夜空を見上げると雲ひとつなく星がはっきりと見えた。 ふと、自分の足音に重なるように後方から足音が聞こえた。 駅から住宅地へと続くこの道。誰が歩いていても不思議ではないが、背中からの足音は気のいいものではなかった。 ゆっくりと歩き先に行ってもらおうとすると足音がやんだ。 通常のスピードに戻すと背後の足音は何事もなかったかのように一定のリズムを刻み始めた。 怖くなった私は携帯電話をジーパンのポケットから取り出し電話をかけるふりをした。 私の演技にだまされてくれたのかただの気紛れなのか追跡者の足音は冷たい風の音に消えた。
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