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誰の悲鳴だった……?
それが聞こえ、僕らは生まれた。
悲劇だった……?
違う。
ぼくらは生まれて始め、悲鳴を聞き、悲鳴を上げる。
二回だ。
二回は悲鳴を聞く。
どんな人でも。
どんな人生でも。
母の悲鳴、近しい者達の悲鳴。
「お父さん……お父さん……」
でも、どちらも悲しいものでは無い。
男の顔を見て、私は動かない手に少し力を入れてみる。
「泣くんじゃない」
男の後ろに並ぶ、見知った顔。
娘、その息子達。
妻は……。
そうか。
先に。
「泣くんじゃないよ」
二回目。
人は死ぬ時、また悲鳴を聞く。
でも、男はそれに悲鳴で応えはしない。
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