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「お前、憎ったらしい顔になったよ」
最初会った時の男。
生真面目に汗を流し、眉は常時困り果ててる様で、口の端に至っては頼りなく歪んでいた。
ちょっと恫喝でもすれば、途端に崩れてしまいそうな。
そんな男だった。
「シワも増えて……何だこりゃ、白髪か」
俺は鼻を鳴らす。
「すっかり、俺と同じだよ」
笑う。
「男はさめざめと泣いちゃいけねえ」
「はい」
「男は黙って逝く、男は黙って見送る」
「……は……い……」
その男は出掛った悲鳴を押し殺し、口を閉じる。
「お疲れ様でした。お父さん」
男はそれに悲鳴で応えはしない。
未来へそれを繋げる為。
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