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ハルナはその全てを見ていた。
親友のアケミに、あの女が、何かを振りかざし、振り下ろした直後、足から崩れ落ちた。
ハルナはその瞬間、咄嗟に角に隠れた。
・・・静寂が続く、ハルナには、自分の脈打つ振動が、耳もとを通じて伝わっている。
ハルナ「あ、アケミ・・アケミ?」
ハルナは陰から、かすれるような小声を掛けた。
少し間をおいて、目を伏せながら廊下に顔を出した。視界には木目調の床が、一面に広がって見える。
段々と目線を上げた、その時、
アケミの、横たわった身体が、視界の全てを覆った。目を避けることが出来ない、金縛りのように、焦点が、アケミの顔に合わせていく。
アケミは、ハルナをずっと、睨みつけるように見つめていた。しかし、その目はまばたきもせず、生きている感触も無く、ただハルナを見つめていた。そしてアケミの額には、墨のように赤黒い血が静かに流れ落ちている。
ハルナは、ただ呆然と、その状況を見つめ、眠くなるような感覚と共に床に頭を落としていった。
・・・・ナちゃん・・・ハルナちゃん、
頭の奥から聞こえてくる声、次第に、自分の肩がゆっくりと揺らされている感触がわかる。
ハルナはゆっくりと目を開けた。目の前にはヒロトが、深刻な面持ちでハルナの顔を覗き込んでいた。
ヒロト「ああ、よかった、目が覚めた」
ハルナは、しばらくヒロトを見続け、頭が冴えるのを待った。時間が経つと、周りの状況が見えてきた。
ハルナはリビングに連れられ、ソファーに寝かせられている。
最初は、ヒロトしか見えていなかったが、よく見ると、すぐ横にナオコがいる、ヒロト同じく、深刻な顔だ。
そして、二人の後ろの方に、ケンタが誰かをなぐさめている。ケンタの声の合間に、女性の嗚咽の声が聞こえる。
ハルナは、ゆっくりと起き上がった。ヒロトとナオコはその様子を目で追っていった。
ハルナはリビングを見渡すと、片隅でケンタが、うずくまっているシズカの背中をさすっていた。
そして、リビングにアケミの姿はない。
ハルナ「あの、アケ、アケミは・・・?」
ヒロトとナオコは顔を見合わせた。その直後、シズカが大声を上げて泣き出した。
ケンタ「シズカ・・・落ち着けよ・・」
ナオコ「無理でしょ、落ち着けるわけないでしょ」
ヒロト「ハルナちゃん、何があったか、覚えてない?」
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