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ナオコはナイロンのジャンパーを羽織って、玄関で腰を下ろし靴紐を結んでいる。
他の四人は、ナオコを囲むようにたたずんでいた。
ケンタ「ナオコちゃん、本当に大丈夫?」
ナオコ「うん、何かあったらすぐに帰ってくるから」
靴ヒモを結び終え、ナオコは両膝をパンっと手で叩いて立ち上がった。
ナオコ「よし、じゃあ行ってくるわ」
ヒロト「やっぱ・・・一緒に行くよ」
ナオコ「大丈夫だって、それにもし、あの女の人がこっちに来たら、ケンタ一人じゃ二人守れないでしょ」
ナオコは、懐中電灯のスイッチを入れて、玄関の扉を少し開けた。
ギィ・・・
ナオコは扉の隙間から懐中電灯を照らした。外は数メートル先に青白く灯る外灯以外は漆黒の闇が広がっていた。
ナオコは振り返り、四人を見回した。
ナオコ「大丈夫そう・・」
ナオコは扉をゆっくりと開けた。次第に、外の異様な静けさは、玄関にいる四人にも伝わってきていた。
扉が数十センチ開くと、ナオコはすり抜けるように、素早く玄関を出ていった。
ガチャ、と扉が閉まる音、その後は、静寂が続く、四人はしばらくたたずんだままであった。
ケンタ「と、とりあえず、リビングで待とうよ」
ヒロト「そうだな」
シズカとケンタはリビングに戻っていった。ヒロトも続こうとしたが、ハルナは玄関に立ち尽くしたままであった。
ヒロト「・・ハルナちゃん?」
ヒロトはハルナの裾を少し引っ張るが、ハルナは微動だにして動かない。
ナオコさん、大丈夫かな・・・
ケンタ「しかし、意外だったな」
ケンタがリビングからヒロトに声をかけた。
ヒロト「何が?」
ケンタ「ナオコちゃん、結構、あっけらかんとしてたじゃんか、アケミちゃんが殺されたのにさ・・・」
シズカ「違うよ・・・」
シズカが静かに答えた。
シズカ「ナオコってさ、周りが騒げば騒ぐほど冷静になるタイプだから、このままだと皆バラバラになると思ったんだよ・・」
ヒロト「そうか・・・」
シズカ「ナオコも相当、ショック受けてると思う、知ってる人間が死んじゃったんだよ?」
ケンタは、シズカの言葉に頷くように、うなだれながらシズカの隣に座った。
シズカ「ねえ、ケンタ、ナオコと一緒に行ってあげてよ・・・」
ケンタ「え、俺・・・やっぱ怖えよ・・・」
ハルナ「じゃあ、私行く」
ハルナは下駄箱から備え付けのサンダルを取り出した。
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