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真っ暗な暗闇の中、ハルナは、横たわることで辛うじて入れたこの空間に静かに息を潜めた。うまく、呼吸を押さえることができない。
大きく深呼吸をしたい、だけど、今大きく身体を動かせば、あの女に見つかる・・・
ハルナは上半身を僅かに起こし、横にある扉を指でゆっくりと開けた。
外の光が、ハルナの顔を照らす。
外を見ると、食堂のテーブルやイスが散乱している。
ハルナが静かにあたりを見回す
その時
ハルナの視界に何かが動くものが見えた。
・・・・・あいつだ・・・
動悸が抑えられない、見つからないようにと息を潜めると、かえって吐く息が大きくなり、吐息はやがて嗚咽となっていた。
ハルナは絶望した、まさか、わずか一日でこんなことになるとは・・・
その日の朝は、夏の日差しが強く、たまに吹く風も暑さを助長するような熱風であった。
ある街道沿いに二台の車が止めてある。それぞれ車には「わ」の入ったナンバープレート。
その車のトランクに、五人の若者が周りを囲っている。そのうちの一人がトランクに半身を入れていた。
ケンタ「うっし、こんなもんかな」
ヒロト「なんとか入った?」
ケンタ「大丈夫だろ、ほとんど向こうで遊ぶもんだし、多少歪んでんかもしんないけど」
シズカ「ちょっとー、私のラケット壊さないでよ、あれ妹のなんだから」
ケンタ「え・・あれ下にひいちゃた・・・」
シズカ「はあ?ふざけんなよ」
ケンタ「うそうそ、冗談」
トランクに覗き込もうとしたシズカをケンタは遮るように止めた。
ヒロト「早く行こうぜ、もう暑くて我慢できねーよ」
ケンタ「そうそう、早く車に乗って涼もうぜー」
五人が二台の車に分かれていくと、アケミは車の窓に近づき、後部座席を見渡した。
中には一人、車内で涼しそうにハルナがスマートフォンを操作していた。
アケミ「ちょっとー、ハルナ何一人で涼んでんのよ」
ハルナはアケミの声に気づくと、ニコッ、と笑顔を見せて内側からのドアを開けた。
ハルナ「いやいや、お疲れさま、さ、さ、中は涼しいよー」
アケミ「なあにが、涼しいよ!」
アケミはハルナに首を絞めるまねをして、ハルナは、ごめんごめんと、アケミに謝った。
五人が車に乗り込むと、しばらくして車が動き出した、車が街道を進むたびに、周りの街路樹の枝が風で上下に揺れていく。
それはまるで、
それぞれの木々たちが、
ばいばいと、
手を振っているかのように。
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