1人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
二台の車は高速を降り、山の中をしばらく走っていた。
やがて山間を抜けると、家々が目立つようになり、家と家の間から海が見えるようになった。
海が見えるたびにアケミとハルナは声を上げ、その声に反応して、ヒロトもチラチラと横を見始めた。
二台が通っている道路は海沿いへと導き、車の右側は一面の海となった。海が見えて数秒もしないうちに、車は速度を緩め、左の駐車場へと入って行った。
停車位置はあらかじめ決まっているらしく、車止めの後ろにある塀に(萩本荘 専用駐車場)と書かれた板がかかっていた。
二台が完全に停車すると、六人は一斉に飛び出し、ハルナ、シズカたちは道路越しに海を眺めていた。ヒロトとケンタはトランクを開けて、積んであった荷物をひたすら降ろしていた。
ヒロト「メッチャはしゃいでんな」
ケンタ「手伝えっつんだよ、ったく、ヒロトさあ、ハルナちゃんとはどうなの?」
ヒロト「ああ、もうちょっと話したいんだけど、なんかはずくてさ・・」
ケンタ「おいっ!冬にダブルデートする計画はどうなるんだ!」
ヒロト「わかってるって、今日は一歩前進してみるから・・」
二人は荷物を駐車場に出して、さらに車内を確認した。
ケンタ「そういえば、ここからどうやってコテージに行くの?」
ヒロト「なんか、向こうのオーナーさんが船で迎えに来るらしい。ここが一番近い船着場なんだって」
ケンタ「っつても、別に島に行くわけじゃねんだろ?もっと車で近づけたろ」
ヒロト「いや、陸側は崖になってて、全然降りれないらしいよ、だから海側から入るしか方法がないらしいよ」
ケンタ「マジかよ!急病人とか出たらどうすんの?」
ヒロト「だから、この前誓約渡したろ、あれ、施設内で何かあっても責任は負いかねません、ってやつだから」
ヒロトはそう言って、車のダッシュボードから一枚の紙をケンタに見せた。
ケンタ「ああ、これそうなんだ、なんにも考えずに書いてたわ」
ヒロト「お前もあと三年で社会人なんだから、よくこういうの見てからサインしろよ」
最初のコメントを投稿しよう!